2037,01.22(Thu)
2009,11.10(Tue)
「ヴラディ。もっと欲張りになりなさい。自分の中で自己完結してはいけないよ。他人を蹴倒せとは言わない、ただ自分の欲しいものを求めもせずにあきらめるのはやめるんだ。
そうしてね、どうしても欲しいと思うその魂の欲求こそが恋だよ」
先生は僕の髪を梳いて肩を撫でる。
先生の一言一言が肩に乗った先生の温かい掌から心臓にまで浸透していくようだ。
僕は求めているのだろうか。
昔、幼馴染の敦に恋したときは、眼が合うだけで幸せで彼の一挙手一投足が気になり心臓がどきどきした。
泰三先生には初めて僕の性と心を開かれ、一瞬に恋に落ちたけれど、告白する前に失恋してしまった。
僕は強く求めたことがない。いつもあきらめてばかりだった。
「僕は・・・」
僕は言い淀む。
いつだって鬱々とした気持ちが自分を消してしまいたいだとか、紛れてしまいたいだとか常に自信がなくて自分から手を伸ばすことが出来なかった。
「なあ、前にも言ったな。恋をしなさい。ヴラディ。それは楽しいことばかりではなくて辛かったりもするけれど、心の中に暖かい思いが育つんだ。求めることが大切なんだよ。欲して抱きしめなさい。我侭だっていいんだ。たとえ誰かを傷つけたとしても」
そうだった。初めて肌を合わせ先生に救ってもらったあの日も、「恋をしなさい」って言われたんだっけ。
「それは・・ねえ、それは?愛とは違うの?」
「そうだな。似ているようで違うんだ。愛は与えるものだよ、全てを包括して全てを許す。恋は求めるもの、我侭で強欲になって自分自身をさらけ出すもの」
「僕はただ、鳴海さんに幸せになって欲しいだけなんだ」
「じゃあ何で泣いているんだ?その涙は誰のため?ヴラディ、彼が君の前からいなくなってもいいのか?彼を捕まえて縋ってごらん。
僕のそばにいて欲しいって伝えて。誰にも渡したくないって強請ってごらん。
そうしてどうしてもだめなら、またここに来るといい。俺も、椿も・・・いつだって胸を貸してあげるよ、涙が止まるまでここで飲み飽かすんだ」
「せんせい・・・」
先生の言葉にカウンターの向こうで椿さんが、にっこり微笑んだ。
「ここはあなたの実家よ。いつでも帰ってきてもいいから、勇気を出してぶつかっていらっしゃい」
「椿さん・・」
僕の周りはやさしい人がいっぱいで。僕はまた忘れるところだった。一人で生きているんじゃないんだ。
なんだかぽかぽか嬉しくて、先生の肩に頭を乗せてうっとりと眼を閉じていると、突然腕を後ろからつかまれた。
「コーシュカ、帰るぞ」
僕が驚いて顔を上げると、鳴海さんがタバコをふかした先生を睨んでいた。
「あっ・・鳴海さん・・」
僕が声を上げると、先生はゆっくりその手を肩から下ろした。けれど、いつも穏やかな笑みをたたえているその瞳が今日は鳴海さんを威嚇するように一瞬険しく光った。
「せんせい・・?」
「ヴラディ、さっきの話を覚えているね。自分に正直に貪欲になるんだよ」
僕に移った眼差しはとても軟らかくて、僕はこくんとうなづき、その手をすり抜けると鳴海さんに向って一歩足を踏み出した。
「鳴海さん・・、あの僕・・」
「勝手に出て行くな、帰るぞ、俺たちの家だ」
俺たちの家に帰る――
その言葉は鼓膜からしびれるように広がり、どきんと大きな音を立て血流が一気に全身を巡る。ずっと欲しかった言葉。二人の未来を暗示する言葉。
「うん、帰る」
僕は鳴海さんの胸に飛び込みそっと呟いた。
僕が鳴海さんに返事をすると、後ろから強い視線を感じた。
「せんせい?」
先生の手が、カウンターの上で強く握られている。
椿さんが、困ったように笑って
「コーシュカ、幸せになるのよ。早く行きなさい。鳴海さんが待っているわ」
といって、先生の手の甲を抓った。
追い出されるように鳴海さんの腕を取り店をあとにすると、ゆっくりと閉じられる扉の向こうで
「先生、だめよ・・もうお馬鹿さんね」
という椿さんの小さな声が聞こえた。
コーシュカ物語55へ。
コーシュカ物語57へ。
もくじへ。
更新が遅くなりゴメンナサイ^^;年内に最終話まで行きたいもんです。ということは11月は週3UP・・?できるかな〜

そうしてね、どうしても欲しいと思うその魂の欲求こそが恋だよ」
先生は僕の髪を梳いて肩を撫でる。
先生の一言一言が肩に乗った先生の温かい掌から心臓にまで浸透していくようだ。
僕は求めているのだろうか。
昔、幼馴染の敦に恋したときは、眼が合うだけで幸せで彼の一挙手一投足が気になり心臓がどきどきした。
泰三先生には初めて僕の性と心を開かれ、一瞬に恋に落ちたけれど、告白する前に失恋してしまった。
僕は強く求めたことがない。いつもあきらめてばかりだった。
「僕は・・・」
僕は言い淀む。
いつだって鬱々とした気持ちが自分を消してしまいたいだとか、紛れてしまいたいだとか常に自信がなくて自分から手を伸ばすことが出来なかった。
「なあ、前にも言ったな。恋をしなさい。ヴラディ。それは楽しいことばかりではなくて辛かったりもするけれど、心の中に暖かい思いが育つんだ。求めることが大切なんだよ。欲して抱きしめなさい。我侭だっていいんだ。たとえ誰かを傷つけたとしても」
そうだった。初めて肌を合わせ先生に救ってもらったあの日も、「恋をしなさい」って言われたんだっけ。
「それは・・ねえ、それは?愛とは違うの?」
「そうだな。似ているようで違うんだ。愛は与えるものだよ、全てを包括して全てを許す。恋は求めるもの、我侭で強欲になって自分自身をさらけ出すもの」
「僕はただ、鳴海さんに幸せになって欲しいだけなんだ」
「じゃあ何で泣いているんだ?その涙は誰のため?ヴラディ、彼が君の前からいなくなってもいいのか?彼を捕まえて縋ってごらん。
僕のそばにいて欲しいって伝えて。誰にも渡したくないって強請ってごらん。
そうしてどうしてもだめなら、またここに来るといい。俺も、椿も・・・いつだって胸を貸してあげるよ、涙が止まるまでここで飲み飽かすんだ」
「せんせい・・・」
先生の言葉にカウンターの向こうで椿さんが、にっこり微笑んだ。
「ここはあなたの実家よ。いつでも帰ってきてもいいから、勇気を出してぶつかっていらっしゃい」
「椿さん・・」
僕の周りはやさしい人がいっぱいで。僕はまた忘れるところだった。一人で生きているんじゃないんだ。
なんだかぽかぽか嬉しくて、先生の肩に頭を乗せてうっとりと眼を閉じていると、突然腕を後ろからつかまれた。
「コーシュカ、帰るぞ」
僕が驚いて顔を上げると、鳴海さんがタバコをふかした先生を睨んでいた。
「あっ・・鳴海さん・・」
僕が声を上げると、先生はゆっくりその手を肩から下ろした。けれど、いつも穏やかな笑みをたたえているその瞳が今日は鳴海さんを威嚇するように一瞬険しく光った。
「せんせい・・?」
「ヴラディ、さっきの話を覚えているね。自分に正直に貪欲になるんだよ」
僕に移った眼差しはとても軟らかくて、僕はこくんとうなづき、その手をすり抜けると鳴海さんに向って一歩足を踏み出した。
「鳴海さん・・、あの僕・・」
「勝手に出て行くな、帰るぞ、俺たちの家だ」
俺たちの家に帰る――
その言葉は鼓膜からしびれるように広がり、どきんと大きな音を立て血流が一気に全身を巡る。ずっと欲しかった言葉。二人の未来を暗示する言葉。
「うん、帰る」
僕は鳴海さんの胸に飛び込みそっと呟いた。
僕が鳴海さんに返事をすると、後ろから強い視線を感じた。
「せんせい?」
先生の手が、カウンターの上で強く握られている。
椿さんが、困ったように笑って
「コーシュカ、幸せになるのよ。早く行きなさい。鳴海さんが待っているわ」
といって、先生の手の甲を抓った。
追い出されるように鳴海さんの腕を取り店をあとにすると、ゆっくりと閉じられる扉の向こうで
「先生、だめよ・・もうお馬鹿さんね」
という椿さんの小さな声が聞こえた。
コーシュカ物語55へ。
コーシュカ物語57へ。
もくじへ。
更新が遅くなりゴメンナサイ^^;年内に最終話まで行きたいもんです。ということは11月は週3UP・・?できるかな〜

tag : BL小説
2009,10.14(Wed)
あわてて飛び出しタクシーを拾って新宿で降りたのはいいけれど、10−TEN−は今日は改装日で店自体が休みだった。
「うあ、本当に馬鹿だな・・」
もはや行き場所は一箇所しかなく足は自然にFOR TOMORROWへと向う。
それでもこんな気持ちのままで赴けば、また椿さんに心配をかけてしまうのではないかと店のある雑居ビルの前で躊躇してしまった。
どれほどそうしていたのだろう。後ろから両肩に手が乗った。
「ひっ・・」
僕は相変わらず臆病者で、びくりと身体を強張らせ振り返ると、頭の上からあのちょっととぼけた太い声がかかる。
「ヴラディ、どうした?」
今この街で、僕を唯一ヴラディと呼ぶその人。
「あ、せんせい」
眉を顰めて泰三先生は僕の顔を覗き込んだ。僕は無性に嬉しくて思わずその胸にすがり付いてしまいそうになる。
「泰三・・・」
彼の後ろから先生を呼び戻す声がする。
「あっ・・」
あわてて先生の手を肩から振り落とすと、先生は怪訝な顔をした。
「あの、僕・・あ。椿さんに用があって。あの、スイマセン急いでいるので」
僕は逃げるように雑居ビルの階段を駆け上がった。
用があるなんて馬鹿みたいだ、急いでいるなんてまったくすぐばれる嘘だ。だって僕はこのビルの前でいったい何分、身動きがとれずにいたことか。
息を切らせて薄暗いドアを開けると、椿さんがにっこり笑って僕を手招きしてくれた。
「あら、コーシュカ、いらっしゃい。うーん、久しぶりね、・・走ってきてくれたの?嬉しいわ」
「あ・・今晩は。あ、あの、ギムレットを」
濃いカクテルが飲みたかった。エイジさんのちょっとキリっとしたカクテルが好きだ。
椿さんが心配げに僕を見ている。
まただ、いつもいつも椿さんに心配をかけてばかりだ。
顔を引きつらせたまま口元だけ笑ってみようとしたけれど、なんだか上手く表情筋を動かすことが出来ない。
「ヴラディ」
程なく開いたドアから現れた先生は無言のまま僕の隣に座った。
「あら、せんせ。今日はデートじゃなかったの?たまにはここにも連れて来てよ」
「せんせぃ・・あの・・タカくんは?」
「ん・・?帰ったよ」
僕は思わず先生の目を凝視した。だってタカくんは、泰三先生に手を伸ばそうとしてぎゅっと唇をかみ締めていたから。
「な、なんで?タカくん置いてきちゃいけない」
恋人が他の男の後を追って消えたら、どんなにか悲しいだろう。
「あいつのことはいいんだよ、ヴラディ?何があった?」
「・・・・どうして。僕の事なんかほっといて、タカくんのところに行ってくださいっ」
「ヴラディ。どうしてこんな顔をしているんだ?どうしたんだ?」
「何もない。何もないです。先生には関係がない」
「ヴラディ」
先生はテーブルに置かれた僕の右手を包むように両手で握った。
どうして先生はいつも。
いつも僕が凹んでいるときばかり現れるのかな。
ぽたり。涙が先生の手の上に落ちる。
「あいつか・・・?」
僕はこくりとうなづき、あわてて首を振った。
「違うんです。鳴海さんが何かしたわけじゃなくて・・ただ」
「ただ?」
「・・・・あるべき姿にもどすべきだと思って」
「あるべき姿?」
「・・・・・・・はい」
「それはどんな形だ?」
「・・・まあるくて・・あったかいもの・・・家族・・親子・・」
先生はふぅと大きくため息をつくと、僕の手の甲を撫でながら優しく語りだした。
「なぁ、ヴラディ、俺は産婦人科医をしている。俺の元に担ぎ込まれるのはたいていが緊急を要する妊婦ばかりだ。いろんなヤツがいるよ。いろんな家族がある。たった一人で産もうとしている女もいる。残念なことに、望まれずに生まれてくる子もいるんだ。なぁ、家族ってなんだろうな。血がつながっていることか?戸籍が整っていることか?それだけじゃないだろ?」
「だけどっ・・だけど」
「・・・いがみ合ってる夫婦の間に生まれた子は不幸だ。誰からも愛されない。愛を知っている子は辛さも優しさも知っている・・そうだろうヴラディ?」
「ヴラディ・・良く考えてごらん。君がこんなにも他人を思いやれるのは愛されて育ったからだよ。亡くなった日本人のお父さんとは家族ではなかったかい?
あるべき姿は丸くてあったかいものなんだろう?それが家族だというのなら・・・
君と鳴海さんもそうではないのかい?」
泰三先生は噛み砕くようにゆっくりと僕に話しかける。
「あの男と・・・・暮らしているんだろう?君はここ最近好い顔をしていたよ」
涙はぽたりぽたり零れ落ちる。
どうして先生はいつも。
いつも僕の欲しい言葉をくれるんだろう。
鳴海さんの胸に抱かれて眠った日。
鳴海さんの孤独と僕の寂しさをお互いの肌で希釈しあい、二人で分かち合った。
それを愛と呼ばずなんというのだろう。
「君は、あいつを愛しているんだ。なあ、欲しいものを欲しいというのは悪いことではないよ」
先生は僕の頭を引き寄せ、やさしく髪を梳いてくれた。
「いい子だ、ヴラディ、君はもっと君の望むままに生きて良いんだよ」
コーシュカ物語54へ。
コーシュカ物語56へ。もくじへ。
久々の先生の登場。庭先の金木犀が香りだしました^^

「うあ、本当に馬鹿だな・・」
もはや行き場所は一箇所しかなく足は自然にFOR TOMORROWへと向う。
それでもこんな気持ちのままで赴けば、また椿さんに心配をかけてしまうのではないかと店のある雑居ビルの前で躊躇してしまった。
どれほどそうしていたのだろう。後ろから両肩に手が乗った。
「ひっ・・」
僕は相変わらず臆病者で、びくりと身体を強張らせ振り返ると、頭の上からあのちょっととぼけた太い声がかかる。
「ヴラディ、どうした?」
今この街で、僕を唯一ヴラディと呼ぶその人。
「あ、せんせい」
眉を顰めて泰三先生は僕の顔を覗き込んだ。僕は無性に嬉しくて思わずその胸にすがり付いてしまいそうになる。
「泰三・・・」
彼の後ろから先生を呼び戻す声がする。
「あっ・・」
あわてて先生の手を肩から振り落とすと、先生は怪訝な顔をした。
「あの、僕・・あ。椿さんに用があって。あの、スイマセン急いでいるので」
僕は逃げるように雑居ビルの階段を駆け上がった。
用があるなんて馬鹿みたいだ、急いでいるなんてまったくすぐばれる嘘だ。だって僕はこのビルの前でいったい何分、身動きがとれずにいたことか。
息を切らせて薄暗いドアを開けると、椿さんがにっこり笑って僕を手招きしてくれた。
「あら、コーシュカ、いらっしゃい。うーん、久しぶりね、・・走ってきてくれたの?嬉しいわ」
「あ・・今晩は。あ、あの、ギムレットを」
濃いカクテルが飲みたかった。エイジさんのちょっとキリっとしたカクテルが好きだ。
椿さんが心配げに僕を見ている。
まただ、いつもいつも椿さんに心配をかけてばかりだ。
顔を引きつらせたまま口元だけ笑ってみようとしたけれど、なんだか上手く表情筋を動かすことが出来ない。
「ヴラディ」
程なく開いたドアから現れた先生は無言のまま僕の隣に座った。
「あら、せんせ。今日はデートじゃなかったの?たまにはここにも連れて来てよ」
「せんせぃ・・あの・・タカくんは?」
「ん・・?帰ったよ」
僕は思わず先生の目を凝視した。だってタカくんは、泰三先生に手を伸ばそうとしてぎゅっと唇をかみ締めていたから。
「な、なんで?タカくん置いてきちゃいけない」
恋人が他の男の後を追って消えたら、どんなにか悲しいだろう。
「あいつのことはいいんだよ、ヴラディ?何があった?」
「・・・・どうして。僕の事なんかほっといて、タカくんのところに行ってくださいっ」
「ヴラディ。どうしてこんな顔をしているんだ?どうしたんだ?」
「何もない。何もないです。先生には関係がない」
「ヴラディ」
先生はテーブルに置かれた僕の右手を包むように両手で握った。
どうして先生はいつも。
いつも僕が凹んでいるときばかり現れるのかな。
ぽたり。涙が先生の手の上に落ちる。
「あいつか・・・?」
僕はこくりとうなづき、あわてて首を振った。
「違うんです。鳴海さんが何かしたわけじゃなくて・・ただ」
「ただ?」
「・・・・あるべき姿にもどすべきだと思って」
「あるべき姿?」
「・・・・・・・はい」
「それはどんな形だ?」
「・・・まあるくて・・あったかいもの・・・家族・・親子・・」
先生はふぅと大きくため息をつくと、僕の手の甲を撫でながら優しく語りだした。
「なぁ、ヴラディ、俺は産婦人科医をしている。俺の元に担ぎ込まれるのはたいていが緊急を要する妊婦ばかりだ。いろんなヤツがいるよ。いろんな家族がある。たった一人で産もうとしている女もいる。残念なことに、望まれずに生まれてくる子もいるんだ。なぁ、家族ってなんだろうな。血がつながっていることか?戸籍が整っていることか?それだけじゃないだろ?」
「だけどっ・・だけど」
「・・・いがみ合ってる夫婦の間に生まれた子は不幸だ。誰からも愛されない。愛を知っている子は辛さも優しさも知っている・・そうだろうヴラディ?」
「ヴラディ・・良く考えてごらん。君がこんなにも他人を思いやれるのは愛されて育ったからだよ。亡くなった日本人のお父さんとは家族ではなかったかい?
あるべき姿は丸くてあったかいものなんだろう?それが家族だというのなら・・・
君と鳴海さんもそうではないのかい?」
泰三先生は噛み砕くようにゆっくりと僕に話しかける。
「あの男と・・・・暮らしているんだろう?君はここ最近好い顔をしていたよ」
涙はぽたりぽたり零れ落ちる。
どうして先生はいつも。
いつも僕の欲しい言葉をくれるんだろう。
鳴海さんの胸に抱かれて眠った日。
鳴海さんの孤独と僕の寂しさをお互いの肌で希釈しあい、二人で分かち合った。
それを愛と呼ばずなんというのだろう。
「君は、あいつを愛しているんだ。なあ、欲しいものを欲しいというのは悪いことではないよ」
先生は僕の頭を引き寄せ、やさしく髪を梳いてくれた。
「いい子だ、ヴラディ、君はもっと君の望むままに生きて良いんだよ」
コーシュカ物語54へ。
コーシュカ物語56へ。もくじへ。
久々の先生の登場。庭先の金木犀が香りだしました^^

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