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駅裏のビジネスホテルのシンプルな一室。
狭いシングルベットに何とか高野を横たえる。

コートを脱がせ、スーツのボタンを外す。抱き上げて、背中から一気に上着を脱がしても高野はすでに泥酔してまったくなすがままだ。
ベルトを外し、スラックスを脱がせる。
しわにならないように椅子に掛けて、今度はネクタイを緩め、襟元を広げる。


高野は時折、煩そうに手で払ったり、薄目を開けて見やるが焦点が合っていない。
そっと寝かしつけて、部屋を出ようとすると
「ワタル・・・」
と呟やき、ギュッと男の手を握り締めてきた。


「ふー、酔っ払いの天然は怖いよ・・・」
そっとベットサイトに腰掛け、反対の手で髪を梳く。
頬をなで、指先で唇をなぞる。
呼吸のために薄く開かれたその間にそっと指を入れると、高野はちゅうちゅうと吸い付いてきた。


「た、たかのさん・・・?」
「高野さんは・・ノンケなんでしょう?無意識でそんなことしないでよ、惚れてしまいそうです・・・」
男はぼそりと呟く。
営業焼けとでも言うのか。手の甲や、顔色や首筋は、程よく日焼けしているというのに、はだけた襟元から覗く肌理細やかな色白の肌。
ごくりとつばを飲むと、男は高野の鎖骨に顔を近づけた。

「高野さん・・・・飲み代くらい徴収させてもらいます」
耳の後ろに目立たぬように吸い付きマークを付ける。鎖骨には残さぬようにぺろりと。

「うーー、やばいな、やめられなくなりそう・・」
すっと、口に入れたままの指を引き抜き、硬度を持たない股間に手を伸ばし黒のボクサーパンツの上からそっとなでて、更には中に手を入れてちょっとだけ確認作業。やさしく扱くと少しだけ形を変える。

握られた右手を、下着にもぐりこんだ左手を、両方とも引き抜いて顔を覆うと、男はぱしんと自分の頬を叩き名残惜しげに呟く。
「・・・高野さん、高野さん・・・もうさ、こんな風に飲んで泣いてはだめですよ・・・奥さんがかわいそうです・・・ワタルくんはあなたの手から飛んでいったんでしょう?もう戻ってきません。・・・・・・・僕は帰りますけど・・今度一緒に飲みませんか?来週の金曜日、19時さっきの場所で・・・覚えていたら来てくださいね?」
酔っ払いに約束なんて無理なことをと思いながら、それ以上ここにいては自分を抑えられないことに気づき男はそそくさとドアを閉めふーと大きく溜息をついた。

「あああ。なんていい人なんだろう・・・自分」
がっくしと頭をたれて。




翌朝目覚めた高野には夕べの記憶は皆無で、どこで誰と飲んでいたかすら覚えてはいなかった。
ただ、あんなに苦しかった割り切れない思いが、たかが酒の力でまるで過去のもののようにすとんと気持ちの底に落ち着いてしまっているのが不思議だったのだ。



チェックアウトを済ませると、あわただしく電車に飛び乗る。
郊外の自宅で、出来ちゃった結婚の朗らかな妻とようやくはいはいを始めた愛らしい娘が待つ家に。
さあ、帰ろう、と。             





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