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高野には何がなんだかよく分からなかった。
「うちに来てもらいます」
と強引に、大将に荷物を持たれランドクルーザーに押し込まれる。

「えっと、センセの車?」
「そうです。車高が高いから見晴らしいいですよ」
大将のイメージにそぐわないアウトドアな4厘駆動。そして運転も・・・。
「歩いても10分、車でも10分・・・一通が多いですからね。都心は走りにくい」


高野は大将に続いて玄関にはいると、綺麗に片付いた2LDKのソファーに座らされる。
「あー、スイマセン、ご迷惑をおかけして。2、3日お世話になります」
点滴に通う間・・・と思っているのだろう。その言葉に、大将はくすりと笑った。

「3日ね・・・・高野さん、この間言ったよね」
「なんだっけ?」
「エミさんが戻らなくても愛ちゃんは手放したくないって」
「・・・・またその話か・・・・エミは愛を手放さないよ・・・そんな事無理だ」
高野は迷惑そうな顔で大将を見上げた。もう二度とこの話をしたくない、と睨み付ける様に。
数秒間、対峙したその瞳を見つめ返しながら、大将は低い声でうなるように恫喝した。

「だから?だから死んでもいいって思ったっていうんですかっ!そんなに愛してるんなら何故手放すんですかっ!そんなのっそんなの僕が許さないっ」

「・・・・・そんなこと思っていない・・・」

「高野さん、うそつきだっ!あんた、轢かれたとき笑ってたんですよ。僕の前で!僕は二度とあなたのあんな顔を見たくないんですっ!。高野さんは本当に欲しいものを自分から手を伸ばして取った事がありますかっ?ないでしょう?ここはあなたの人生にとっての正念場だって分かってますか!?これから、僕の言うことを聞いて下さい!」

あまりの剣幕に、高野は返答するタイミングを逸した。

「・・・いいですか、エミさんはあなたがおっしゃるように2度とあなたの元には戻らないでしょう。ご自分の求めるものを手に入れるために飛び出して、今、そのために精一杯の努力をしている。潔し、とすら言える。なのにあなたは未練がましく戻らない過去ばかり追っているんだ」

「エミさんは戻らない、だからといってあなたが娘を手放さなくっちゃいけないわけじゃあないんですよ」


「世の中、父子家庭なんてごまんといますよ、珍しい事じゃない・・・あなたは、それだけ傷つけられたのに、まだ、エミさんが傷つくのを恐れている、傷つける自分を恐れている。彼女は選択したんです。自分の生き方を。だからあなたも自分の欲しいものを大きな声で叫んでもいいんです」

「だから、僕がお手伝いします。取り返すのも、育てるのも。だから、一緒に暮らすわけです」

「何を言ってるんですか。そこまでしてもらういわれはないよ」

「僕は医者ですよ、僕の目の前で笑いながら死のうとしている人を助ける義務があるんです、あなたは僕の患者です」

「だからといって、一緒に暮らすわけには」

「環境さえ、愛ちゃんを育てるのに適していれば、エミさんだって引き渡さざるえない。・・・泰三の実家が今度区画整理で病院を建て替えます。規模を拡大して産婦人科、小児科病院になるんですが、僕はそこに勤める事になっています。病院に隣接して作られるマンションも泰三の持ち物なので、10月にはそこに引っ越します。愛ちゃんが大きくなって学校から帰宅しても病院に遊びに来ればいいだけなので寂しい思いはさせなくてすみます。ああ、それに僕の母親は看護士であり保育士で、託児所をそこに作る予定だし。もちろん、愛ちゃんは手元に引き取れ次第、日中預かってもらう事になってますから。高野さんも安心して仕事にいけますよ」

「それにね、エミさんの想い人にはすでに二人の子供がいます。彼女は必ず手に入れますよ、それだけの強さを持っている人です・・・・だけど、現実問題、すでに二人いる子供に、連れ子を連れて一緒になっても、これから先、新たに子供を授かる事は金銭的にも難しいでしょう。そう、彼女はまた子供を作る事が出来る・・・だけどあなたは今後結婚する事はないって言いましたよね。生涯子供は「愛ちゃん」だけでいいって・・・だったら、あなたが育てればよい」

「何言って・・・?」


高野はあっけに取られた。
空いた口がふさがらない。
すでに大将の中ではすべてのことが計画済。

「大きくなったらって、いつまでも世話になるわけには」
「これから先もずっと一緒に暮らすんですよ」
「はあ?あなたにだって、結婚する日が来るでしょう!恋人だって!」
高野が何とか反論を試みるが一笑に付されてしまう。

「お忘れですか?僕はゲイですから、そんな日は来ませんし。恋人はいませんからお気遣いなく。それにあなたも二度と結婚しないと約束しましたし。僕も子供が育てられるのが嬉しい。愛ちゃんにとっても最良の方法です。あなたの仕事は出張も多いんですから。側にいつも一緒にいる人が必要なんです。分かりましたか?はいは?」

「は、はい」




・・・・思わず、返事をしてしまう高野はまるで鳩が豆鉄砲を食らったよう。

(年下のくせにっ、生意気すぎる!)
反論の余地のない展開に、心の中で悪態を付いてみるしかなかった。


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展開が巧くいかない^^; 大将ってもしかして大型犬?タイプ??


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