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8月9月・・・事態がなんら進展しないまま夏の暑い太陽が初秋になっても勢いを落とすことなく照りつけ、熱帯夜が続く。

高野と大将の共同生活も3ヶ月目にはいり、お互いの役割が確立してきた。料理と洗濯は高野、掃除は大将。高野のほうがウェイトが重いのは洗濯も平気で色柄物とワイシャツをがんがん洗う大将に鉄拳を振り下ろしたためだ。



風呂上りの高野は、紺色のボクサーパンツ一枚に、タオルを首に掛けたまま団扇をパタパタさせながら、ビールを一気に煽っている。

「ぷはーっ、やっぱ風呂上りの1杯はきくな」

「健、なんか親父くさいね・・・」
「はっはっ!いいんだよ、もうね、親父まっしぐらでさ、俺は、もう恋愛も結婚もしなくて清く正しく生きるんだから」

「それってさびしくないですか?」

「いいよ、まあ、おまえが話し合い手でいてくれるしさ、仕事も順調だし。俺、今月は幹を抜いてトップだったし・・・・それよか、大将の恋愛の邪魔になってないか?」

「いやー、別に〜。気にしないで下さい。恋人は今はいないし。それに、僕は家に連れ込むのが好きじゃないんですよね、別れた時、残像が残っているような気がして」

(あなたが好きなんです、あなたが好きなんです、あなたが好きなんです)
銀縁の眼鏡の奥からじっと見つめ、部屋のすべてが高野に染まればいいのに、と思う。

高野の薄く筋肉の付いた陽に当たらない白い胸が、アルコールの摂取で薄くピンク色に変化していく。
右側の鎖骨にある小さな黒子に口付けをしたい・・・そんな欲望が日がたつにつれ大きくなっていくのを大将は抑える事が出来ない。
眼福・・・とついつい目がそらせられなくなる高野の胸の小さなピンク色の突起。
舐めて、吸って、指で捻って、噛んで・・・喘がせてみたい。


「あっと・・・明日は夕飯いらないです」
「あれ、夜勤だったっけ?」
「いや、ちょっと・・・ナースたちと飲みにいく約束をしていて」

明日は久々の2丁目。泰三と二人で行って、気に入った子がいれば、そのまま持ち帰る。そうやって内側でちらちら火がついた炎が業火になる前に、沈火せねばもう収まらなくなってしまった体。一夜の関係でもいい、今はこの熱を覚まして、また次の日から今この目の前にいる人になんでもない振りをして笑いかけたいのだ。


「いいなあ、お前が飲みに行くんなら、俺もどっか行こうかな」
「え・・・?どこに?」
「ほら、前に一緒に行ったじゃん、駅裏の・・・えっとなんだっけ?ショットバー」
「・・・コーシュカ?」
「そうそこ!あすこいいよな、一人で飲んでも落ち着くし。雰囲気がまったりしてるというか」
「だめ!だめですよっ!あすこは僕と行くときだけにしてくださいよっ。健は口当たりがいいとすぐ泥酔しちゃって帰る家忘れちゃうじゃないですか!」
「おまえ、俺いくつだと思ってんの?大学生のがきじゃあるまいし、酔いの程度くらい自分でセーブできるし。お前なんでいつも命令ばっかすんの?よっしゃ、明日はコーシュカで飲むぞ!」


弟への許されない想い、娘への断ち切れない愛情、そういった胸の奥で押さえこまれた恋情が徐々ににおい立つようになっているというのに。酒に酔った高野は声を掛けずにいられないそんな色香さえあるのだ。
コーシュカに一人で行くことがどんなに危険なのか、高野はぜんぜん認識していない。

「だめですっ!絶対駄目!・・・あーわかりましたっ!一緒に呑みに行きましょう!ね、そうしましょうね」
「ああ?お前が呑み会だから俺も飲みに行こうかなって話しだろうが」
「ナースに興味がないけど、断る口実がなかっただけです!明日ね、20時、西口の改札にいてください、僕がに行きますから!」

高野には、大将が何を焦っているのかわからなかったが、大将と外に呑みに行く事が久しぶりで、『なんだかデートのようだ』と、笑いながら言うと、大将の顔が見る見る耳まで赤く染まったので、高野は「がはははっ」と、机を叩いて笑った。

大将の心の機微が理解できない高野である。



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